Rui's Blog

超低ビットレート電力線通信による電力需要調整

家庭での電力消費におけるエアコンの割合は高いから、ピーク時にエアコンを消してもらうだけで電力需要はかなり調整できる。しかしこれをどうやるかということが問題で、たんに節電をお願いするというのは心もとない。むしろどんなエアコンもコンセントにつながっているのだから、この線を使ってパワーグリッド側から各家庭のエアコンをコントロールできればいいと思う。では、どうすれば一番安く効率的にそういう大規模なシステムを構築できるだろうか? ちょっと考えてみた。

家庭のコンセントの電圧は100ボルトを中心に普段から数ボルト変動している。原理的に発電所での発電量を増やすと電圧が上がり、減らすと電圧が下がる。ということは、電力事業者が発電量を調整して電圧をわずかに意図的に変動させることで、その電力網内でコンセントに刺さっているすべてのデバイスに情報をブロードキャストすることができるはずだ。発電所を1Hz以下の超低周波数帯を使った超巨大電力線モデムみたいに使うわけだね。AM変調で。

発電所が意図的に作り出した電圧変動はその他の要因による電圧変動と混ざって埋もれてしまうだろうけど、ノイズがいかに多い通信路でも適切なエラー訂正符号を使えば信頼性の高い情報伝達ができるというのは情報理論の基本。たぶんビットレートは相当低いがエアコンを制御する程度なら1ビット/分くらいでも十分だろう。

エアコン側には適当なロジックを足して(今後発売されるものに義務付ければよい)、「エアコンよ止まれ」という信号が送られてきたときに止まるようにする。「1/3の確率で止まれ」とか「温度設定を2度上げろ」などというコマンドを実装すればもっと細かい負荷調整もできるし、「いまから1時間後に止まってほしいから今のうちに冷やしておきたいなら冷やしておいたほうがいい」などという情報を送ることも考えられる。

こういうシステムだと、発電事業者は発電所のハードウェアを変更したり電柱一本一本に設備を足したりする必要はなくて、発電所の制御プログラムを変更するだけでよい。発電設備の投資額に比べればタダみたいなものだろう。エアコンに電力線の電圧を読み取るセンサーを足すのも非常に安く済みそうだ。実際のところ夏の特定時間帯のピーク時需要に対応するために莫大な設備投資をしていることを考えれば、最悪時にパワーグリッド側から需要調整できるのを前提にシステムを考えなおすことで、全体でずっとコストを浮かせることができると思う。不要不急の装置だけリモートから一斉に停めるのは停電に比べて混乱もはるかに少ない。